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科学と食がつながる「第1回サイエンスレストラン」を開催

令和8年7月11日(土)、白老町において、「リジェネ・エクスペリエンス」の記念すべき第1回事業となる「サイエンスレストラン」を開催しました。

本イベントは、北海道大学リジェネラティブ農林水産研究拠点(IRAFF)と、北海道大学COI-NEXT「次世代和牛生産システム構築拠点」が主催し、一般社団法人TOP(Think One Planet®)との共催により実施したものです。研究の現場を訪ね、研究者や生産者の話を聞き、最後にその土地で育まれた食材を味わう――「見る・知る・食べる」を一つにつないだ、新たな体験型プログラムです。

雨の中、牛たちが暮らすフィールドへ

当日は小雨が降り続くあいにくの天候となりましたが、参加者はJR白老駅に集合後、敷島ファームへ移動し、実証フィールドの視察を行いました。

参加者は傘を手に、放牧されている牛たちの姿を間近に見ながら、牧場での飼養方法や草地の利用、白老町における和牛生産の取り組みについて説明を受けました。

雨に濡れた草をゆっくりと食む牛たち。その穏やかな姿を前に、参加者の皆さんは説明者の言葉に熱心に耳を傾けていました。

普段、食卓で目にする「牛肉」が、どのような土地で、どのような人々の手によって育まれているのか。実際のフィールドに立つことで、畜産を取り巻く環境や、命を育てる仕事の重みを肌で感じる時間となりました。

参加者は、傘を差しながらも足を止め、研究者や現場担当者の説明に真剣な表情で耳を傾けていました。
単なる見学にとどまらず、「この環境で何が起きているのか」「どのように価値を生み出しているのか」といった問いが自然と生まれる、密度の高い時間となりました。

科学と実践が交差する瞬間

午後は、白老町中心部の「The Old Grey Brewery」に会場を移し、サイエンス講話を行いました。

北海道大学「次世代和牛生産システム構築拠点」のプロジェクトリーダーである後藤貴文教授からは、「グラスフェッド和牛肉のサイエンス」と題し、現在進められている和牛畜産研究について紹介がありました。

グラスフェッド和牛の生産に関する科学的背景や、代謝・飼養管理に関する知見についての解説と、最新の研究成果を交えながら、これからの和牛生産が目指す姿について、分かりやすく解説されました。続いて、株式会社敷島ファームの高田正樹社長からは、白老のフィールドにおける実践的な取り組みと、地域から新たな価値を創出する挑戦について共有されました。

飼料価格の高騰、担い手不足、環境への配慮など、畜産を取り巻く状況は決して容易ではありません。一方で、地域の資源を生かしながら、新しい生産方法や価値を生み出そうとする現場の挑戦も続いています。

研究者が語る科学的な可能性と、生産者が語る現場の実感。その二つの視点が重なることで、持続可能な和牛生産を実現するためには、研究と現場がともに歩むことが欠かせないということが、より鮮明に伝わってきました。

「知る」を「味わう」へ —サイエンスレストランの真価

講義の後は、本イベントの象徴ともいえる「サイエンスレストラン」が実施されました。料理を手がけたのは、村上千砂シェフ、奥田祐也シェフ。

前菜には「地魚のセビーチェ」と「グラスフェッド和牛のカルパッチョ」。メインには、白老産の「みやび椎茸」とホースラディッシュのソースを添えたグラスフェッド和牛のステーキが登場しました。さらに、白老・虎杖浜のたらこを使ったパスタなど、白老の海と大地の恵みをふんだんに取り入れた料理が、コース仕立てで提供されました。

今回使用されたグラスフェッド和牛は、後藤貴文教授が進める「次世代和牛生産システム構築拠点」の研究の中で生産されたものです。研究を通じて育まれた和牛を、実際に料理として味わうことができる点も、今回のサイエンスレストランならではの大きな特徴となりました。

午前中に牧場で見た牛たちの姿、午後に聞いた研究者と生産者の言葉。それらを思い返しながら味わう料理は、単に「おいしい」というだけではなく、その一皿が生まれるまでの土地、人、研究、そして命のつながりを感じさせるものでした。

会場では、料理が運ばれるたびに歓声が上がり、参加者同士の会話も自然と弾みました。シェフから料理や食材について説明を受けながら、グラスフェッド和牛ならではの味わいと、白老の食材が織りなすコースをゆっくりと堪能しました。

次の一歩へ——地域とともに描く未来

「サイエンスレストラン」は、研究成果を一方的に紹介する場ではありません。

研究の現場を訪れ、生産者の声を聞き、その成果や可能性を料理として味わうことで、科学をより身近なものとして感じてもらう試みです。
雨の牧場から始まり、研究者と生産者の言葉を経て、一流のシェフが仕立てた食卓へ。
白老の自然、畜産、研究、食文化が一つにつながったこの一日は、これからの農林水産業と地域の未来を考える、印象深い機会となりました。

IRAFFでは、今後も研究者、地域、生産者、料理人など、さまざまな人々をつなぎながら、リジェネラティブな農林水産業を「知る」だけでなく、「体験する」機会を創出してまいります。